2018June

6月号

あなたが今日
HIV検査を
受けるべき理由
あなたが今日HIV検査を受けるべき理由あなたが今日HIV検査を受けるべき理由

01

6月1日~7日は
HIV検査普及週間

毎年、6月の第1週は、HIV検査普及週間です。
国や各自治体は検査数を増やすなど、様々な取り組みを行っています。
特に、今年1月には、厚労省の「エイズ予防指針」が5年ぶりに改正されました。
改正にあたっては、有識者を集めた小委員会が何度も開催され、STD研究所もこの小委員会をすべて傍聴しています。

今回は「エイズ予防指針」の改正ポイントからあなたに伝えたい「HIV検査を受けるべき理由」をお伝えします。
ぜひこの検査週間をきっかけに、HIV検査の大切さについて考えてみてください。

02

本当は身近なHIV。
日本で毎日何人が感染しているか知っていますか?

HIV感染報告数は横ばい

HIVエイズという病気は知っていても、今、日本で一日に何人の人が感染しているか、ご存じでしょうか?

HIV感染/いきなりエイズ報告数グラフ

(参考資料)エイズ予防情報ネット

現在、毎年約1,400人の感染報告があります。つまり、一日約4人が感染しているということです。
国によるHIVエイズ対策は継続して行われているにもかかわらず、ここ数年、感染者数は横ばいという状況が続いています。なかでも問題なのが、「いきなりエイズ」の割合が減らないことです。

「いきなりエイズ」=「早期発見できなかった人」が3割

HIV(エイズの原因ウイルス)に感染しても、すぐにエイズ(免疫力の病気)になるわけではありません。 感染してから数年~10年程放置するとエイズという病気を発症します。 エイズ発症前にHIV検査を受けて感染が分かれば、治療で発症を抑えることができるのですが、発症前は症状が無い期間が長く続くため、 感染に気づかず、エイズを発症して初めてHIVに感染していたことに気がつくことがあります。 これを「いきなりエイズ」といいます。
「いきなりエイズ」とは、「発見が遅れてエイズを発症してしまった」、つまり早期発見できなかったということです。
いきなりエイズの報告数は毎年500件前後。HIV感染報告数の約3割の人が「早期発見できなかった」ということになります。

今回の予防指針の改正では、この「早期発見」が多く語られました。

03

なぜ、早期発見が大切なの?

今やエイズは「治療できる」病気

HIVエイズの治療は、一昔前とは比べ物にならないほど、格段に進歩しています。
現代では、きちんと治療を受ければエイズで死ぬことはありません。
薬を1日1回1錠ほど飲むだけ、副作用もほとんどありません。
実際、「早く治療を始めた人」と「治療を遅らせた人」で比較した所、「早く治療を始めた人」の方が、エイズやその他の病気を発症したり、亡くなったりするリスクが57%も低かったことが分かっています。(START試験 1))。 このことから日本の「抗HIV治療ガイドライン 2)」でも、「できるだけ早く治療を始めること」が推奨されています。

「エイズでは死なない」どころか、早く治療を始めることで、感染していない人と同じように生活し、寿命がまっとうできるようになってきているのです。

「治療は予防」ってどういうこと?

さらに、治療の効果は治療だけにとどまりません。
今のところ「ウイルスを排除する」ことはできないものの、治療によって、体の中のウイルス量を「検査でも検出できないくらい」まで少なくすることができるのです。
「ウイルスが検出できない」ということは、大切なパートナーなど、他の人に感染させるリスクがほとんど無くなるということです。
これについても、大規模な研究によって「早く治療を始めた人」の方が「治療を遅らせた人」よりも、パートナーへの感染が96%も抑えられるということが分かりました。 3)(HPTN052試験)
つまり、治療は他の人への感染予防にもなるのです。

このように、早く発見して治療を始めることは、健康のためには良いことばかりなのです。

04

じゃ、なんでみんな検査を受けないの?

50%が、まだ「エイズは死ぬ病気」と思っている

せっかく検査を受けようと思っても、ためらってしまう人が多いのではないでしょうか。
理由は、「エイズの怖いイメージ」。今年3月に発表されたばかりの内閣府の世論調査 4)によると、なんと52.1%もの人が、「エイズは死に至る病」という古いイメージを持っていることが分かりました。
長らくHIVエイズの正しい知識を伝えてきたSTD研究所としては、この数字はショックでした。

「怖くて受けられない」という人に対して、エイズは怖い病気ではないことを伝えていくこと。正しい知識の「普及啓発」も今回の予防指針改正のポイントです。

とはいえHIV検査って受けにくい

ただ、そこまで怖いイメージを持っていなくても、HIV検査はまだまだ受けにくい現状があります。
性病の悪いイメージがあるので(本当は誰にでも関係のある病気なのですが…)、病院や保健所などで気軽に受けにくいと感じる人も多いようです。

「検査を受けやすい環境」を整えること。これも、今後のHIVエイズ対策の一つの柱として語られました。

05

厚労省 予防指針
「早期発見のための施策」を強化

どれくらいの人が早期発見できている?
現状把握のための、検査数値報告

今回の予防指針改正のポイントの一つが「CD4数の報告」です。
実は、検査で感染が分かった時点の「CD4数」から、早期発見できているかどうか、つまり対策の効果が出ているかが分かるかもしれないと言われています。
CD4はヒトの免疫細胞の一つで、HIVはこの細胞を利用して増殖します。そのため、HIVに感染するとCD4が破壊され、どんどん減っていきます。CD4数の減り具合から「どれくらい前に感染したか」が推定できるという訳です。

検査数が語る
「みんなが受けやすいHIV検査」

早期発見のためには、「検査を受けやすい環境づくり」が大切です。
そんな中、注目が集まっているのが「郵送検査」です。

保健所等及び郵送検査 HIV抗体検査数 保健所等及び郵送検査 HIV抗体検査数

(参考資料)エイズ予防情報ネット、厚生労働省HIV研究班調査

自治体でも、匿名・無料で検査を実施している一方で、実は郵送検査によるHIV検査数が、年々増え続けています。
郵送検査は有料ですが、多くの人が「郵送検査なら、自宅でできるし、自分の都合で受けやすい」と感じているようです。
「検査を受けやすい環境をつくる」という点で、郵送検査は今後重要になってくることが予想されます。
そういった状況から、今回の予防指針では初めて郵送検査についての言及がありました。

「検査を受けやすい環境」づくり。
信頼できるHIV検査のための郵送検査の役割

とはいえ、単に受けやすければいいというものでもありません。
厚労省研究班では、以前から「HIV郵送検査の在り方とその有効活用に関する研究」という研究が行われており、郵送検査における「医療機関への連携」の重要性が指摘されています。
検査でせっかく陽性が分かっても、治療につながらなければ検査していないのと同じですからね。

また、郵送検査は人と対面せずに検査できるという便利さがある一方で、人による丁寧な対応が難しいのでは?と思われがちです。
確かに、その点についてはそれぞれの企業の考え方に任されているのが現状といえるでしょう。

STD研究所の取り組み

STD研究所がお届けするSTDチェッカーでは、以前より、医療機関への連携に力を入れています。
検査結果の確認画面では、全国の医療機関を検索できるシステムを提供しています。
また、陽性となった方には、性感染症の専門員が個別に対応し、受診しやすい医療機関さがしから、受診の手順まで、すべて医療機関に連絡しながら調整しています。
検査を受けた方とのやり取りは、完全に匿名でありながら、チャットのような間隔でやり取りできる画面もあります。
より多くの方にとって「気軽に受けやすく」「安心できる」検査の提供するために、取り組みを進めています。

06

STD研究所より、
あなたへのメッセージ

今回の予防指針改正の大きなポイントは「早期発見・早期治療」。陰性でも陽性でも、早く分かるに越したことはありません。
「今日、HIV検査を受けるべき理由」、感じていただけたでしょうか。

普通に生活していると「あ、HIV検査受けよ」なんて思うことはあまり無いかもしれません。ぜひこのようなきっかけを利用して、気軽に検査を受けてみてください。