2018November

11月号

世界エイズデー企画
UPDATE!
エイズ治療のこと
レッドリボン 世界エイズデー企画 UPDATE! エイズ治療のこと 世界エイズデー企画 UPDATE! エイズ治療のこと

01

エイズ治療、
正しいのはどれ?

12月1日は「世界エイズデー」。今年のテーマは、「UPDATE! エイズ治療のこと HIV検査のこと」。
2ヵ月にわたるエイズ特集の前半は、エイズ治療の最前線についてお伝えします。

さて、みなさんはどれくらいHIV/エイズのことをご存じでしょうか?
まずは小手調べのクイズです。

HIV/エイズ クイズ1 HIV/エイズ クイズ1

「エイズの治療」と聞いて、イメージするのは上の3つのうち、どれですか?

正解は



「B」です!

いかがでしょう。
もしかすると、「A」と思った方が多かったかもしれません。

確かに、1990年代は、エイズの治療といえばAでした。
当時のエイズ治療は、手の平いっぱいになるくらいの薬を毎日飲む必要がありました。また、副作用も強く、治療はとても辛いものでした。

でも、今は治療法が進歩していて、副作用はほとんど無く、「一日一回一錠の薬」で大丈夫になっています。

02

HIVに感染したら、
何年生きられるの?

では、このクイズはいかがでしょうか?

「HIVに感染したら、何年生きられるの?」

HIV/エイズ クイズ2 HIV/エイズ クイズ2

正解は



「C」です!

驚いた方も多いかと思います。「A」や「B」ではありません!

確かに、1980年代、エイズが初めて発見された当初は、原因も治療法も分からず、感染すると発症して亡くなってしまうのを見送るしかない、まさに死に至る病でした。
報道も盛んに行われ、あまりにセンセーショナルな当時の様子を知る人たちには、死に至る病というイメージが深く刻まれており、今もこの時のイメージが払拭できていないのが現状です。
実際、今年の内閣府の世論調査によると「エイズは死に至る病である」とう印象を持っている人が全体の52.1%1)という残念な結果が発表されています。

でも、これはもう昔の話。 今は、HIVに感染しても、「早く見つけて」治療を始めれば、エイズを発症することはありません。
また、治療を継続することで、寿命を全うすることができるようになっています。
2017年5月に発表されたばかりの研究によると、20歳で治療を始めた人の平均寿命は78歳。2)
HIVに感染していない人とほぼ同じです。

03

HIV/エイズは
完治できるの?

エイズという病気の発見から約30年たち、「一日一回一錠の薬」で「感染していない人と同じくらい生きられる」ところまで治療法は大幅に進歩してきました。
しかしまだ、残念ながら、HIV(エイズウイルス)を体内から完全に排除することはできません。
今もなお、多くの研究者が、新たな治療法の開発を進めています。

例えば、つい先月発表された研究報告によると、1回の点滴で、ウイルス抑制効果が数ヵ月続いたとのことです。3)
この方法が実現できれば、年に数回の治療で済むようになり、患者さんの負担が大幅に減ります。

また、近年話題になっている「ゲノム編集」の技術によって、まだ実験室レベルの段階ではありますが、HIVの遺伝子を壊し、増殖を止めることに成功しています。4)

もしかすると、HIV感染症/エイズを完治できる日がいずれやってくるかもしれません。

04

U=UとPrEP
“治療”を
使った画期的なHIV“予防法”

このような治療法の飛躍的な進歩に伴って、予防法に関しても、画期的な方法が考え出されています。

HIVの予防法というと、ごく身近なところでは、コンドームによる予防がありますね。
安価で手に入りやすく実用的な方法です。

今、世界では、「U=U」というキーワードが注目されています。5)

「U=U」は、
「Undetectable=Untransmittable」の略で、
日本語では、「検出限界以下=感染しない」となります。

つまり、感染した人の体内のHIVを「検出限界以下」の量まで抑えられれば、他の人に「感染しない」ということ。
現在は治療をしっかり継続することによって、「検査でも検出できないくらい」少ない量までウイルスを抑えることができます。

「それって治ってるんじゃない?」と思うかもしれませんが、検査で検出されなくなっても、残念ながらウイルスがいなくなった訳ではないので、治療を中断すると、体内に潜んでいたウイルス量が戻ってしまいます。

ただ、「検査でも検出できないくらい少ない」ということに思わぬ効果があることが、わかってきました。
それが、【他の人への予防効果】です。
「検査でも検出できないほどのウイルス量」はすなわち、他の人に感染させるリスクがほとんど無い、ということであり、このことは実際に、大規模な実験においても証明されています。6)

また、反対に、「感染していない人」が治療薬を飲むことで予防する方法もあります。
それが、「PrEP(プレップ)」です。
リスクのある行為の前に、あらかじめ継続してHIV治療薬を飲んでおくことで、感染を防ぐというものであり、
現在、感染者数がとても多い海外のいくつかの国ではこの予防的な服薬が導入されています。7)

このように、HIV治療は今も日々進歩し、いまや予防にまで応用されているのです。

05

UPDATE!
エイズ治療のこと
HIV検査のこと

毎年12月1日は「世界エイズデー」です。今年のテーマは「UPDATE!エイズ治療のこと HIV検査のこと」
今月の特集では、エイズ治療と予防の最前線について、ご紹介しました。

エイズが発見されてから30年、エイズが死の病では無くなってから20年ほど経ちました。
にもかかわらず、未だ「エイズは死に至る病気」というイメージを持っている人がまだ半分以上です。

こういったイメージのために、「結果を知るのが怖くて検査が受けられない」という方が多くいらっしゃいます。
検査を受けなければ感染しているか分からず、治療に繋がりません。

せっかく治療が進歩したのに、治療につながらなければ意味がありません。
ぜひ、このエイズデーを機会にエイズ治療・予防のイメージをUPDATE!(アップデート!)してください。

次回の特集では、HIV検査のUPDATEをご紹介します。