2018July

7月号

梅毒大流行
結局、何に
気をつければ良いの?
あなたが今日HIV検査を受けるべき理由あなたが今日HIV検査を受けるべき理由

01

梅毒が急増!
わずか7年で9倍!

今、梅毒に感染する人が急増しています。2010年は年間で600人あまりだったのに対し、2017年の感染者数は、全国で5,820人(暫定値) でした。 1)
わずか7年ほどの間に9倍に増えています。
これを受け、厚労省や各学会が対策に乗り出す事態となっています。
今年5年ぶりに改正された厚労省の性感染症予防指針では、梅毒の最新の状況が盛り込まれました。
また、各学会も梅毒の治療を見直したり、梅毒蔓延防止のため、国民へ向けた啓発活動を始めています。
今回は、その最新の対策現場から、あなたに気をつけてほしいことをご紹介します。

梅毒患者の報告数の推移

出典:厚生労働省「性感染症報告数」

02

梅毒急増って言っても、
何に気をつければいいの?
~厚労省予防指針改正の現場より~

今年1月、厚労省の「性感染症に関する特定感染症予防指針」が5年ぶりに改正されました。2) 改正にあたって行われた有識者による小委員会では、「梅毒」が重要な議題の一つになっていました。小委員会で取り上げられた内容から、梅毒について気をつけていただきたいポイントをご紹介します。

あなたも当てはまる? 
20~30代女性、20~50代男性に急増

「梅毒急増」といっても、まんべんなく増えているわけではありません。
目立って増えているのが、「異性間の性的接触」による感染で、女性は特に20~30代の若い世代、男性は20~50代の幅広い世代で急増しています。

年齢別の梅毒報告数(女性) 女性は20代~30代の若い世代で増加
年齢別の梅毒報告数(男性) 男性は20代~50代の幅広い世代で増加

出典:厚生労働省「性感染症報告数」

性風俗での感染が増えている!?

特定の世代での増加の原因について、はっきりとしたことはわかっていないのですが、性風俗で働く人やその利用者の間で感染が広がっていることが指摘されています。
小委員会での報告によると、梅毒の届け出の際に、性風俗産業で働いている人や利用したことがあるという報告が増加しているとのことです。

性風俗の利用・従事(梅毒の届出より)

第5回厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会より

風俗で感染した場合、もしかすると「風俗でうつされた」なんていう風に考えがちかもしれません。
でも、性風俗を利用するにしても、そこで働くにしても、感染症の予防については、「お互い様」ではないでしょうか。
性行為の時は、自分の身体も相手の身体も同じように大切にする気持ちを持ちたいもの。
一番現実的な予防法であるコンドームをしっかり使いたいですね。

赤ちゃんへ感染することも。妊娠している方、そのパートナーの方は特に注意

女性での感染増加の影響で、もう一つ問題になっているのが、「赤ちゃんへの感染」です。
妊婦が梅毒に感染していると、胎盤を介して赤ちゃんに感染することがあります。これを「先天梅毒」といいます。
これまで、先天梅毒は年に数件程度でした。
ところが、女性の感染者増加の影響で先天梅毒も増えており、2016年は15件 発生しています。3)
妊婦が無治療のままだった場合、40%が死産、あるいは生まれてからすぐに亡くなってしまう と言われています。4)
出産の4週間前までに完治できれば、先天梅毒を予防することができます。
妊婦健診に梅毒の項目が含まれているので、妊娠している人は、きちんと妊婦健診を受けることが大切です。

キスやオーラルセックスで感染!? 「口腔咽頭病変」に注意

クラミジア淋菌でも問題になっていますが、梅毒はオーラルセックスでも感染します。
しかも、梅毒による「できもの」が口にできた場合は、そこに病原菌がたくさん存在するため、口との接触で、さらに感染を広げてしまいます。また、唾液からうつる可能性も言われており、キスも要注意です。
意外かもしれませんが、このような感染経路もあるんだ、ということをぜひ知っておいてください。

性風俗の利用・従事(梅毒の届出より)

第5回厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会より

感染したことがあっても、安心できない。梅毒は何度でも感染する

梅毒に感染すると、血液中に抗体ができます。
この抗体は治癒後も消えないため、「抗体ができたらもう感染しない」と思っている方も多いようです。
しかし、残念ながらこの抗体は再感染を防ぐ効果はありません。
つまり、梅毒は何度でも感染する病気なんです。一度感染したことがあるからと言って、安心はできません。

03

こんなときはどうすれば?
各学会からの警鐘とは

梅毒の急増を受け、関連する学会も動いています。いったい、どのような内容なのでしょうか。

梅毒に感染したかも…と思ったら、恥ずかしがらずに先生に伝えて

実は、梅毒は医師にとっても診断が難しい病気。
そのため、最新情報を把握している学会が、広く一般の医師にも診断できるよう「梅毒診療ガイド」を作成したほどです。5)

診断が難しい原因として、最近まで患者数が少なく梅毒を見る機会が少なかったこと、そして、梅毒の症状がとても多彩なことが挙げられます。
実際に、ヘルペスの再発だと思っていたら実は梅毒だったり、原因不明の頭痛が梅毒だった、といった事例もあり、「偽装の達人」なんてあだ名もあるほどです。

梅毒の診断には、まずは「梅毒かもしれない」と疑うことがとても大事。
それができるのは、感染の可能性があったかどうかを知っている自分のみです。
心当たりのある行為があったら、必ずそれを医師に伝え、梅毒の検査を受けるようにしてください。

治療は最後までしっかり受ける

梅毒の治療は、病状によっては数ヵ月かかる場合もありますが、確実に治すことが大切です。
症状が無くなっても、治っていなければ、身体の中で病気は静かに進行していきます。
現在、治療の途中で来院をやめてしまう患者さんがいることが問題になっていて、より患者さんにとって負担の少ない治療方法の導入が学会や厚労省において検討されています。

すべての方へ

他の性感染症と同じく、梅毒も「誰にでも関係のある病気」です。
日本性感染症学会は、「ストップ!梅毒 プロジェクト」を発足し、関連する5つの学会と協力して国民の皆さんへ向けてメッセージやリーフレット を発表しています。6)
ぜひそちらもご覧いただき、感染の可能性のある行為があった場合は、検査を受けてみてください。