川崎市衛生検査所登録
第291号
STD研究所
エニーラボラトリー
コンドームは避妊のためだけでなく、STD(性感染症)予防に効果的です。
HIV/エイズやクラミジア、淋菌などは性行為の際にコンドームを正しく使用することで、ほぼ完全に予防できます。
しかし、その一方、コンドームでは防ぎきれないSTDがあることをご存知ですか?
今回は、その中でも代表的な 「性器ヘルペス」 と 「尖圭コンジローマ」 について、特集します。
性器ヘルペスと尖圭コンジローマは、クラミジアや淋菌に次いで感染者の多いSTD(性感染症)です。
性行為によって誰にでも感染の可能性があり、近年、特に若い世代での感染拡大が問題となっています。
これらは共に、皮膚や粘膜にできるブツブツやイボなど、目に見えやすい症状が出る性感染症です。
具体的には、おしりや太もも、肛門など、性器周辺の皮膚や粘膜の広い範囲に症状が出ます。
症状が出る場所は似ていますが、典型的な症状は、以下のように大きく違います。
性器ヘルペス | 尖圭コンジローマ | |
---|---|---|
症 状 |
水疱のようなものができ、 それが破れてただれたような状態になり、 強い痛みになります。 原因は単純ヘルペスウイルスです。 ただし、感染したからといって、必ずしも症状が出るわけではありません。 |
ニワトリのトサカ (カリフラワー状) や、 乳頭のようなイボができます。 痛みなどは、ほとんどありません。 原因は良性型ヒトパピローマウイルス(6型と11型が代表的)です。 感染してから症状が出るまで3週間〜8ヵ月間と言われています。 |
イボやブツブツ・・・、強い痛み・・・、 できれば感染を避けたいものですね。
基本的に、性感染症の予防には 「性行為時のコンドームの使用」 が最も大切であるとされています。
コンドームは物理的なバリアの役割を果たすため、お互いの性器粘膜や、精液・腟分泌液・血液などの体液が接触するのを防ぐことができます。
HIV/エイズ・クラミジア・淋菌などの病原菌は、性器粘膜や体液に存在するのに対し、性器ヘルペス・尖圭コンジローマのウイルスは、おしりや太もも、肛門などの広い範囲に存在する可能性があるため、コンドームの使用だけでは予防できないことがあるのです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
日ごろから、自分やパートナーの性器周辺の状態を確認する意識を持ち、症状が出ている場所との接触を避けることが大切です。
しかし、ここからが、これら性器ヘルペスと尖圭コンジローマの難しいところですが、
感染してから症状が出るまでに少し時間がかかったり、現在の治療では、症状を収めてもウイルスを完全に排除することが難しかったりします。よって、お互いの体の状態によっては、症状が出ていない時でも、感染することがあるのです。
性器ヘルペス感染者の約70%が、相手が無症状の時に感染したという報告もあります。
では、感染してしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか。
おかしいな? と感じた場合は、早めに病院で相談されることをおすすめします。
早く適切な処置を行うことで、症状は軽くすみ、回復も早くなります。
性器ヘルペスと尖圭コンジローマは、以下が主な治療法です。
性器ヘルペス | 尖圭コンジローマ | |
---|---|---|
治療法 |
抗ウイルス剤を5〜10日間服用 軽い症状では軟膏を塗布、重い症状では点滴 ※再発を繰り返す場合は、再発を抑える治療法もあります |
軟膏を塗布する治療や、外科的治療など ※外科的治療: 電気メス、炭酸ガスレーザーによる焼却、液体窒素による凍結療法などでの切除 |
受診科 | 泌尿器科(男性)、婦人科・産婦人科(女性)、皮膚科、性病科 | |
※実際の治療法は、医師の診断の上、患者の状況などで個別に決定されます。 |
特に性器ヘルペスは、過労やストレスなどで体の免疫力が落ちている時に、再発しやすくなります。
繰り返す症状には不安がつきまといますが、この再発を少なくするために、毎日の治療で症状があらわれる前にウイルスの増殖を抑える 「再発抑制療法」という治療法があります。
この治療は、再発を少なくするだけでなく、パートナーへの感染率を下げることがわかっています。
性器ヘルペスの再発で悩んでおられる方は、ぜひ医療機関でご相談されることをおすすめいたします。
もしパートナーに、これらの感染が分かった場合は、ぜひ一緒に、治療のこと・今後の予防・生活面の注意点について、治療にあたられた医療機関で尋ねてみてください。 正しい知識があれば、感染しているパートナーの良き理解者として、精神的なサポートができるようになります。